
骸と紅炎の愛染烈魂尊
この「骸と紅炎の愛染烈魂尊」は、私にとって「魔王」というキャラクターの最も内面的で極限的な再解釈です。
私は「魔」を単なる悪役とは見なしていません。むしろ、人の心の最も真実な側面――欲望、執着、恐怖、業――を象徴する存在として捉えています。本作では愛染明王を精神的な核とし、「欲望こそ修行」「忿怒こそ慈悲」という密教の思想を、神と鬼のあいだに存在する異相権現として表現しました。
造形面では、大元帥明王、蔵王権現、青面金剛神のイメージを融合させ、忿怒、智火、覚性を兼ね備えた存在感を持たせています。配色は愛染明王の象徴的な赤を基調に、金色の炎のバックライトを組み合わせることで、神聖でありながら危険さを感じさせる表現にしています。
プロポーションは童形を維持しつつ、厚みのある造形に。細部には骸骨の要素を取り入れ、死や無常、業の存在を象徴させています。半骸骨の表情は神性と鬼性の共存を示し、忿怒と微笑のあいだの微妙な表情で「すべてを見通しながらも、なお世に生きる」という状態を表現しました。
原型から塗装まで全て手作業で仕上げており、複製される神像ではなく、感情や生命感を持つ現代的な造形作品として制作しています。奉納の対象ではなく、単なる玩具でもありません。手に取りながら、欲望や生死、自己存在について思索するきっかけを与える立体作品です。
私にとって「魔王」は、単なるキャラクターではなく、人と神、善と悪、覚悟と堕落のあいだに横たわる、最も曖昧で真実な境界そのものです。



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